インバウンド爆買いから越境ECへ(1)
2016.11.14
訪日中国人爆買いの象徴的光景のように取り上げられていたラオックスさんが急減速しているようです。
ラオックス、「平均客単価4割減」の巨大衝撃 –東洋経済
ラオックス最終赤字11億円 1~6月、中国人客が減少 –日経
ラオックス、純損益が赤字転落 中間決算、爆買い減速で –朝日新聞
記事の中から気になる部分を抜き出すと、
『訪日中国人を中心とした来店客のニーズが変化し、売れ筋が高額の時計や炊飯器などから、価格のより安い医薬品や化粧品に移っているという。平均購買単価は昨年1年間の3万3820円が、4~6月には2万2922円にまで落ち込んだ。』朝日新聞より
と購買単価が2/3になっていると言う。
爆買いが終わった、訪日中国人が消費しなくなったと言われていますが、本当にそうなのでしょうか?
観光庁発表の『訪日外国人消費動向調査』のデータを見てみます。下の表は発表データの内『居住地別1人1回あたり旅行消費単価』から中国居住者のデータです。
2015年と2016年を比較すると、やはり減っていますね。2015年の最大値と直近(最小値)では7万円強(29%)も減っています。とはいえ1~3月には春節(旧正月)が有るため、消費金額が多くなりがちだと思われます。
では訪日中国人側の視点に立ってみます。彼らの通貨『人民元』に換算したらどうでしょう?それぞれの期間でのレートで人民元換算してみました。
大騒ぎするほどの変動幅でしょうか?
これは訪日中国人の消費マインドが冷えたというより、彼らの予算は変わらず、為替の影響で日本で使える金額が減っただけと言えませんか?
これでまた円安元高に振れたら『爆買い再来!』って話になりそうですが、訪日中国人側からしたら『は~?』って事になりかねませんね。
炊飯器や掃除機のような高額耐久消費財や高級時計などは購入層も限られますし、購入頻度も高くありません。記事でも言及しているように、医薬品や化粧品にニーズが変化しており、日本の商品がより日常化しつつある事が見て取れます。ニーズが日用品に移ることは、リピート機会が増える事になりますが、日用品を買うためにわざわざ海外まで出かけません。
そこで俄然盛り上がっているのが越境ECです。越境ECに関してはこちらもご参照ください。
iResearchの報告によれば、2015年は9,000億元、2016年には1兆2000億元に達すると予測しています。
出展:iResearch
プロファイルを見ると『そうなんだ』と言う感じですが、個人月収1万元未満の層が日本商品を好むと言う部分、どう反応して良いか困るところではあります。
次週:インバウンド爆買いから越境ECへ(2)へ続きます
中里